No.215新着 カラオケの採点の歴史 社交場の採点機から精密採点・分析採点へ、点数は「音程の正確さ」から「うまく聞こえるか」に近づいた
カラオケの点数を出す機械は、全国カラオケ事業者協会の年表では1980年に社交場で流行し、1982年にはクラリオンが採点機付きのカラオケを出している。DAM の「精密採点」は2003年、JOYSOUND の「分析採点」は2012年ごろの機種に載っていることが確かめられた。2010年代には音程だけでなく抑揚やビブラートも見るようになり、2025年の「精密採点Ai Heart」は聴いた感じのうまさを算出するとされる。採点の始まりは資料により食い違う。
本文と出典
あらまし
カラオケの点数は、機械が歌声を分析して出す。始まりの年は一つに決まらず、資料に出てくる最も古い記録は1980年代の初めである。その後、音程だけを見る点数から、抑揚やビブラートなどの歌い方、さらに聴いた感じのうまさまでを算出する採点へと変わってきた。
本稿は、各社の機種と機能の移り変わりを、確かめられた範囲で並べる。点数が歌い方をどう変えたかを直接調べた資料は見つからなかったので、その部分は考察に回す。
主なできごと
・1980年 社交場にカラオケ採点機のブームが起こる(全国カラオケ事業者協会の年表)
・1982年 クラリオンが採点機付きカラオケ「MW-5000A」を発売(同年表)
・1994年 第一興商が通信カラオケ「DAM」を発売。初代機で採点を使うには、別売りのボイスアダプターを接続する必要があった(ウィキペディア)
・1995年4月 日立がカラオケ対応マルチディスクプレーヤーを発表。歌声の採点機能をCD・CD-Gでも使えるようにし、二人で競う「採点バトル」も付けた(日立のニュースリリース)
・1995年 DAM が採点ゲーム「カラオケオーディション」を開発(ねとらぼ)
・2003年 DAM の BB cyber DAM に「精密採点」が載る
・2004年 全国の歌い手が一か月の順位を競う「ランキングバトル」が始まる(ねとらぼ)
・2006年11月 JOYSOUND の HyperJoy WAVE が、リアルタイムの全国採点「全国採点ONLINE」を入れる(ウィキペディア)
・2010年10月 LIVE DAM が「精密採点DX」を載せる
・2012年 第一興商が iPhone 用の採点アプリを配信。JOYSOUND の JOYSOUND fR が「分析採点III」を載せる
・2019年10月 LIVE DAM Ai が「精密採点Ai」を載せる
・2023年11月 JOYSOUND X1 の採点が「分析採点AI+」になる
・2025年4月18日 LIVE DAM WAO! が稼働を始め、「精密採点Ai Heart」が載る
点数を出す機械の登場
全国カラオケ事業者協会の年表には、1980年に「社交場にカラオケ採点機ブーム起こる」、1982年に「クラリオン・採点機付カラオケ「MW-5000A」発売」とある。これが、確かめられた最も古い採点の記録である。いずれも通信カラオケの登場(1992年)より前である。
1990年代の資料では、採点はすでに付属の機能として扱われている。1995年4月の日立のニュースリリースは、既存の採点機能をCDとCD-Gでも使えるようにしたと説明し、二人で得点を競う機能を加えた。同じ1995年、第一興商は採点ゲーム「カラオケオーディション」を作った。ねとらぼの取材では、DAM の技術者が、これがその後の採点コンテンツ開発の出発点になったと答えている。
精密採点の積み重ね
DAM の現在の採点の土台は、2003年の「精密採点」だとされる。ウィキペディアによると、2002年にはすでに音程のずれを歌詞の上に記号で示す練習向けの「The うたれん」があった。精密採点は2007年に「精密採点II」、2010年10月に3世代目の「精密採点DX」、2015年4月に「精密採点DX-G」へと改められた。2017年10月には、100点の上限を超えて加点する「精密採点DXミリオン」も出ている。
ねとらぼ(2017年10月)で開発者が語った「精密採点DX-G」の中身は、次のとおりである。音程は画面の音程バーに合わせて歌えたかどうかを見て、正確率が95%以上、表現力が90%以上なら高得点の目安になる。表現力は抑揚、しゃくり、こぶし、フォールの4種の技を合わせて100点満点で評価する。ほかにビブラート(5段階)、ロングトーン(5段階)、安定性(10段階)、リズム(7段階)を見る。同じ記事で開発者は、キー、テンポ、マイクの種類、部屋の形は採点エンジンに直接影響しないと説明している。音程は、機械が最も正確に判定できる分野だという。
JOYSOUND の分析採点
JOYSOUND 側では、2006年の HyperJoy WAVE が全国の歌い手と競うリアルタイムの採点を入れた。「分析採点III」は2012年10月の JOYSOUND fR に載った。カラオケ評論家の唯野奈津実はオールアバウト(2013年11月12日更新)で、JOYSOUND f1 の分析採点3にある「熱唱度」を紹介している。開発元のエクシングによると、音圧や感情が高まったときの声のゆらぎなどを検知する指標で、総合得点とは別に表示され、100点を超えることもある。筆者は、音程や声量より声質の変化で判定していると感じたと書く。
その後、2015年7月の JOYSOUND MAX では歌手の中西圭三が監修した新しい採点の計算方法を作り、名前も「分析採点マスター」になった。2023年11月の JOYSOUND X1 で「分析採点AI+」となった。なお、「分析採点」という名前が最初に登場した年は、確かめられた資料では分からなかった。
聴いた感じのうまさへ
2019年10月の「精密採点Ai」は、感性で歌唱力を評価するとウィキペディアが記す。2025年の LIVE DAM WAO! は5年半ぶりの全面的な機種の入れ替えで、採点は「精密採点Ai Heart」になった。DXマガジン(2025年3月9日)は、聴感を重視した新しい「ハートエンジン」が歌い手の個性を採点に反映させると伝えた。協力した CRI・ミドルウェアの発表(2025年4月25日)は、第一興商独自のAIが「人が実際に聴いてうまいと感じる要素」をリアルタイムに算出すると書く。ただし、どんな要素をどう数えるのかは、確かめた資料に出ていない。
カラオケで歌うなら
DAM の開発者の説明では、キーを変えても、マイクを替えても、点数そのものは変わらない。変わるのは、歌いやすさを通じた結果である。音程の正確率が土台になるので、声域に合うキーに下げて、音程バーを見ながら歌うのが、点数を狙うときの基本とされる。採点の項目は機種と世代で違うため、確かめられた項目は2017年の機種のものに限る。
評価の分かれる点
一つ目は、採点の始まりである。年表の1980年と1982年が最も古いが、機械の仕組みや点数の出し方は書かれていない。日立の1995年の発表は「従来の」採点機能と呼び、DAM は1995年を採点ゲームの出発点とする。何を採点の始まりと数えるかで年は変わる。
二つ目は、点数の価値である。ボイストレーナーの Minnie P. はリアルサウンド(2021年9月15日)で、アーティスト本人の曲でも85点ほどしか出ないことがあるとして、100点を目指すことが正解ではなく、点数を盲信する必要はないと述べた。一方、DAM の開発者は、採点は「歌がうまくなりたい」人のために作ったと語る。目安として使うのか、うまさの物差しとして使うのかで、見方が分かれる。
くらさんの考察
以下は資料に書かれていない、くらさんの推測である。
音程が最も機械に向いた判定だという開発者の説明から、初期の採点が音程中心だったのは自然だと考えられる。抑揚やこぶし、ビブラートが加わったのは、音程だけでは「うまい人」と「正確なだけの人」が分けられなかったからではないか。「熱唱度」やAIの「聴感」へ進んだのも、同じ流れの延長に見える。
点数が出ると、歌い手は音程バーの色を気にして歌うようになる。一方で、友人と点数を言い合うことが、歌う場の話題にもなった。1995年の「採点バトル」や2004年のランキングバトルのように、競う仕組みが早くから付いていたのは、点数が遊びの道具として受け入れられたからだと考えられる。ただし、点数狙いの歌い方が広まったことを示す資料は、今回は確かめられなかった。
ジージへの問いかけ
・昔のスナックで、点数の出る機械が置かれていたのを覚えていますか。点数が出ると、歌う人の様子は変わったと思いますか。
・点数が出るカラオケと、出さないカラオケでは、どちらが歌いやすいと思いますか。
・演歌や歌謡曲のこぶしや節回しは、機械が点数にできると思いますか。
出典
・全国カラオケ事業者協会「カラオケ歴史年表」 https://www.karaoke.or.jp/03nenpyo/
・ねとらぼ(2017年10月28日、第一興商の技術者への取材記事) https://nlab.itmedia.co.jp/cont/articles/3272332/
・ウィキペディア「DAM (カラオケ)」 https://ja.wikipedia.org/wiki/DAM_(カラオケ)
・ウィキペディア「JOYSOUND」 https://ja.wikipedia.org/wiki/JOYSOUND
・日立製作所ニュースリリース(カラオケ対応マルチディスクプレーヤー、1995年4月) https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/9504/04-27.html
・オールアバウト「分析採点3」の熱唱度(唯野奈津実、2013年11月12日更新) https://allabout.co.jp/gm/gc/432697/
・DXマガジン(2025年3月9日) https://dxmagazine.jp/news/2509uk16/
・CRI・ミドルウェアの発表「LIVE DAM WAO!」(2025年4月25日) https://digitalpr.jp/r/106273
・リアルサウンド「ボイトレ需要の変化」(2021年9月15日) https://realsound.jp/2021/09/post-856910_2.html
動画
・【LIVE DAM Ai】精密採点Ai 紹介動画(カラオケDAM公式チャンネル)https://www.youtube.com/watch?v=I6JpcAfvb8Y
関連動画
この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージが音楽QAでくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。