No.209新着 カラオケのデュエット曲 銀恋から「居酒屋」「ラブゲーム」へ、男女で歌う定番はどう生まれたか
男女で掛け合いながら歌うデュエット曲は、1961年の「銀座の恋の物語」のあと、「昭和枯れすゝき」(1974年)、「居酒屋」(1982年)、「男と女のラブゲーム」(1986年)、「ロンリー・チャップリン」(1987年)など、酒場とカラオケで歌い継がれる曲を生んだ。全国カラオケ事業者協会は2022年に、デュエット曲が歌われにくくなっていると述べている。一方、DAMの2025年デュエット年間ランキングには、1949年の「青い山脈」も入っている。
本文と出典
あらまし
デュエットは、二人で歌う歌のことである。ウィキペディアの「デュエット」の項は、日本では昭和歌謡から生まれた男女の掛け合いを含む恋愛ソングが、特にデュエットと呼ばれてきたと説明している。
カラオケでは、この男女の掛け合いの形が、酒場で居合わせた二人が一曲を分け合う遊びとして定着した。1961年の「銀座の恋の物語」(別記事で扱う)を出発点に、1970年代から80年代にかけて、スナックで歌われる定番が次々に現れた。本稿は、その後の流れを、確かめられた曲に限って追う。
主なできごと
・1961年 「銀座の恋の物語」(石原裕次郎と牧村旬子)が1月にテイチクから発売される。公称300万枚を超える売上とされ、現在もカラオケの定番デュエットとして歌い継がれている
・1974年 「昭和枯れすゝき」(さくらと一郎)が7月に発売される。翌1975年5月から3週間、オリコン週間1位になり、同年のオリコン年間1位になった
・1982年 「居酒屋」(五木ひろしと木の実ナナ)が10月25日に発売される
・1986年 武田薬品の胃腸薬のCMで「男と女のラブゲーム」が披露される。12月21日に日野美歌と葵司朗の版が最初にレコード化される
・1987年 「男と女のはしご酒」(武田鉄矢と芦川よしみ)が11月11日に発売される。同年の7月には「ロンリー・チャップリン」(鈴木聖美 with Rats&Star)も発売されている
・1992年 「世界中の誰よりきっと」(中山美穂とWANDS)が10月28日に発売される
・2022年 全国カラオケ事業者協会の事務局担当者が、デュエット曲があまり歌われなくなっていると述べる
・2025年 DAMのデュエット年間ランキングで、1位がMrs. GREEN APPLEの「点描の唄」になる
有線とドラマから広がった「昭和枯れすゝき」
さくらと一郎の「昭和枯れすゝき」は、1974年7月21日に発売された。作詞は山田孝雄、作曲はむつひろしである。発売当初は売れ行きが伸びなかった。同年10月16日から放送されたテレビドラマ「時間ですよ昭和元年」で、居酒屋の場面の挿入歌に使われると、有線放送を中心に人気が出たという。
売上は、ウィキペディアの本文が150万枚としている。一方、同じ項の情報欄にはオリコン調べで100.2万枚とあり、数字が食い違う。この項はカラオケとの関係を述べていないので、この曲がスナックで歌われたかどうかは、今回の資料では確かめられなかった。
「居酒屋」が定番になるまで
「居酒屋」は、阿久悠が作詞し、大野克夫が作曲した。1982年10月25日に発売され、歌い手は五木ひろしと木の実ナナである。もとは五木のLPにソロで入っていた曲で、同じ徳間音工のバーボン・レーベルに所属していた木の実が、デュエット企画でそのカバーを出すとき、相手に五木が指名された。五木にとっては初めてのデュエット・シングルになった。
ウィキペディアの五木ひろしの項は、最高位29位、登場48週、売上は20万枚に迫ると記している。集計元は書かれていない。この数字だけを見ると、チャートの上位を占めた曲ではない。それでも大野克夫の項は、この曲がカラオケの定番デュエットとなり、JASRACが発表した平成の著作権使用料の分配額トップ100で2位になったと書いている。発売時の売れ行きよりも、その後に歌われ続けた量が大きい曲だと考えられる。
大野の項によれば、この曲の作曲で2012年にJASRAC賞の30回記念特別表彰銀賞を受けている。
CMから広がった「ラブゲーム」
「男と女のラブゲーム」は、1986年に武田薬品「タケダ胃腸薬21」のCMで、武田鉄矢と芦川よしみがサビの部分を歌ったのが始まりである。問い合わせが多く、全曲分が作られてレコード化された。作詞は魚住勉、作曲は馬飼野康二である。
CMに出た二人の版は、武田が「イメージに合わない」と断ったため、すぐには発売されなかった。代わりに、1986年から翌年にかけて、7社が別の歌手で競って出した。最初のレコードは1986年12月21日の日野美歌と葵司朗の版で、葵の出身地の名古屋地区限定で売り出したところ反響が大きく、全国発売になった。オリコンでは週間10位、1987年の年間41位とされる。JASRACの1987年度の分配額は国内作品で年間3位だった。ウィキペディアの本文には出典が不十分との注記がある。
同じCMの続きとして、1987年11月11日に「男と女のはしご酒」が武田と芦川の名で発売された。作詞作曲は同じ二人で、ザ・ベストテンでは週間最高5位だった。
ロンリー・チャップリンと「世界中の誰よりきっと」
「ロンリー・チャップリン」は、鈴木雅之の姉の鈴木聖美と、弟でラッツ&スターのリーダーの鈴木雅之が歌った。1987年7月1日の発売で、オリコン週間最高18位、累計10万枚以上とされる。当初はチャートの順位が低く、深夜のCMや歌番組での披露で少しずつ上がった。のちにカラオケのデュエットの定番になったとウィキペディアは述べている。
「世界中の誰よりきっと」(1992年)は、オリコン集計による累積が約183万枚とされる。ウィキペディアの「デュエット」の項は、オリコン集計が始まった1968年以降で、デュエット曲の最大のヒットと記している。
カラオケで歌うなら
デュエットは、一人が受け持つ部分と二人で歌う部分が曲によって違うので、歌う前に確かめたい。確かめられたのは、男女二人で歌う形が基本だという点までである。キーやテンポは、今回の資料では確認できなかった。
DAMの公式サイトに載る2025年年間(デュエット部門)の1位から8位は、Mrs. GREEN APPLEの「点描の唄」(井上苑子)、KinKi Kidsの「愛のかたまり」、Da-iCEの「CITRUS」、ROSE & Bruno Marsの「APT.」、Da-iCEの「I wonder」、EXILEの「Lovers Again」と「道」、神田沙也加と津田英佑の「とびら開けて」だった。9位は1949年の「青い山脈」(藤山一郎と奈良光枝)、10位は「ロンリー・チャップリン」で、古い曲が新しい曲と同じ表に並ぶ。公式ページに集計期間の記載はなく、更新日は2026年1月1日と表示されていた。
評価の分かれる点
デュエットが廃れたのかどうかは、資料によって見え方が違う。週刊女性PRIMEの記事(2022年9月公開)で、全国カラオケ事業者協会の担当者は、ここ2、3年デュエット曲があまり歌われなくなってきており、コロナ禍で密な環境を避けているのだろうと述べた。同じ記事によると、カラオケ白書の酒場ランキングは、2015年度にはトップ10にデュエット曲が3曲あったが、2021年度には0曲になった。担当者の説明は推測で、確かめられた原因ではない。
一方、DAMの2025年の年間ランキングでは、デュエット部門の10位までに1949年の曲と1987年の曲が入っている。ただし、こちらはデュエットとして登録された曲だけの順位で、全曲の中での位置を示す酒場ランキングとは別物である。両者を単純には比べられない。
くらさんの考察
男女のデュエットが酒場で歌われたのは、二人の関係を決めずに、歌の登場人物の関係に預けて歌えるからだと考えられる。マイクを分け合う相手は、歌のあいだだけ恋人にも、飲み屋の客にもなれる。この見方は、出典で確かめたものではなく、くらさんの推測である。
「居酒屋」や「ラブゲーム」は、発売時の順位ではなく、その後にどれだけ歌われたかで定番になった。「居酒屋」は最高29位でも、平成の分配額で2位に入ったとされる。「ロンリー・チャップリン」も、深夜のCMと歌番組でじわじわ上がった。デュエットは、売れた枚数と歌われた回数がずれやすい分野だと考えられる。
ジージへの問いかけ
・ジージがスナックや宴会で、初めて見知らぬ女性と一緒に歌った曲は何でしたか。
・「居酒屋」や「ラブゲーム」が流行った1980年代の酒場では、デュエットを誘うのは男でしたか、女でしたか。
・最近の酒場では、デュエットを歌う人が減ったと感じますか。
出典
・ウィキペディア「デュエット」 https://ja.wikipedia.org/wiki/デュエット
・ウィキペディア「銀座の恋の物語」 https://ja.wikipedia.org/wiki/銀座の恋の物語
・ウィキペディア「昭和枯れすゝき」 https://ja.wikipedia.org/wiki/昭和枯れすゝき
・ウィキペディア「木の実ナナ」 https://ja.wikipedia.org/wiki/木の実ナナ
・ウィキペディア「五木ひろし」 https://ja.wikipedia.org/wiki/五木ひろし
・ウィキペディア「大野克夫」 https://ja.wikipedia.org/wiki/大野克夫
・ウィキペディア「男と女のラブゲーム」 https://ja.wikipedia.org/wiki/男と女のラブゲーム
・ウィキペディア「男と女のはしご酒」 https://ja.wikipedia.org/wiki/男と女のはしご酒
・ウィキペディア「ロンリー・チャップリン」 https://ja.wikipedia.org/wiki/ロンリー・チャップリン
・ウィキペディア「世界中の誰よりきっと」 https://ja.wikipedia.org/wiki/世界中の誰よりきっと
・週刊女性PRIME(2022年9月17日公開)カラオケ事業者協会の話 https://www.jprime.jp/articles/-/25126
・カラオケDAM公式「カラオケ年間ランキング(デュエット)」 https://www.clubdam.com/ranking/duet/year.html
動画
・居酒屋(五木ひろし&木の実ナナ)(Itsuki Hiroshi - Topic)https://www.youtube.com/watch?v=zhkuBrNLqBE
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この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージが音楽QAでくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。