No.84新着 なごり雪(伊勢正三・1974年/イルカ・1975年) かぐや姫のアルバム曲が、カバーで国民の春の歌になった
かぐや姫の伊勢正三が21歳で作り、1974年のアルバム『三階建の詩』に入れた曲。翌1975年にイルカがシングルで歌うとオリコン4位、累計80万枚とされるヒットになった。モチーフは伊勢の故郷、大分県津久見の駅。「なごり雪」という言葉自体が当時はなく、批判もあったと伊勢は語っている。
本文と出典
あらまし
「なごり雪」は、かぐや姫の伊勢正三が作詞作曲した曲である。最初に出たのは1974年3月12日発売のかぐや姫のアルバム『三階建の詩』で、シングルではなかった。このアルバムはオリコンのアルバムチャートで1位、年間5位になっている。伊勢がプロとして作詞作曲した初めての作品とされる。
曲を広く知らしめたのは、1975年11月5日に出たイルカのシングルである。編曲は松任谷正隆。オリコン週間最高4位、1976年度年間11位で、イルカのシングルでいちばん売れた曲になった。一人の作り手の曲が、作ったグループと、カバーした歌手の両方の代表曲になった珍しい例である。
主なできごと
・1973年秋 伊勢正三が22歳になる前に作る
・1974年3月12日 かぐや姫のアルバム『三階建の詩』に収録
・1975年11月5日 イルカがシングル発売(B面「ラバーボール」)
・1976年 イルカ版が年間11位に。清水由貴子が『スター誕生!』でこの曲を歌って合格
・1982年 榊原郁恵が第33回紅白でカバー
・2002年 大林宣彦監督の映画『なごり雪』。伊勢が主題歌として録り直し、4月13日にシングル発売
・2009年10月 JR津久見駅の接近メロディになる。2010年3月に記念碑
・2024年 第75回紅白で南こうせつとイルカが一緒に歌う
生まれたいきさつ
ウィキペディアによると、伊勢は1973年秋、22歳になる直前にこの曲を書いた。初めにさびのメロディと言葉が浮かび、そこから物語を付けていったという。南こうせつたちに聴かせたときの反応がよくないと感じ、一晩で次の曲「22才の別れ」を作ったともされる。詞は締め切りを過ぎてようやくでき、題名が決まったのは録音のあとだった。
伊勢は、故郷の大分県津久見市の津久見駅を思い浮かべて作ったと話している。ただし歌の中の「東京」は、上京してからの自分の体験を映したものだという。歌に出てくる「汽車」は、九州では蒸気機関車がなくなったあとも国鉄の列車を汽車と呼んでいた名残で、寝台特急を指すとされる。
「なごり雪」という言葉
「名残の雪」ではなく「なごり雪」とした理由を、伊勢は、春先に降る最後の名残惜しい雪を表したかったからだと説明している。発表当時は「なごり雪」という言葉がなく、批判もあったという。それが2013年に日本気象協会の「季節のことば36選」に選ばれ、伊勢は喜びを語っている。歌から生まれた言葉が、天気の言葉として定着したことになる。
歌の内容を読む
駅のホームで、汽車を待つ二人がいる。東京で過ごした女性が、ふるさとへ帰っていく場面だと読める。時期はずれの雪が降り、歌い手は、去年よりきれいになった相手を見送る。二人が恋人だったのか、はっきりした約束があったのかは書かれていない。季節が春に変わることと、相手が少女から大人に変わることが重ねられ、その変化に置いていかれる若者の寂しさが中心にある。
カラオケで歌うなら
ソロで歌う曲だが、2024年の紅白のように作り手側とイルカが二人で歌った例もあり、男女どちらが歌ってもおかしくない。卒業や転勤、春の別れの季節に選ばれやすい曲である。海外でも歌われていて、伊勢の連載(ぴあ、2024年)によると、ブラジルの日本人移民80周年の催しに招かれたのは、日系人の間でこの曲と「22才の別れ」がカラオケで大人気だったからだという。会場では日系3世がローマ字の歌詞で大合唱したと伊勢は書いている。
カバーの広がり
イルカのほか、天地真理、岩崎宏美、五木ひろし、中森明菜、徳永英明、松山千春、桑田佳祐、平井堅など、ウィキペディアに書ききれないほどのカバーがある。ウィキペディアは、イルカが歌った当時、日本でほかの歌手の曲をカバーすることは珍しかったとする。カバーを勧めたのは夫の神部和夫だったとされる。
評価の分かれる点
イルカ版の売上は、1976年にかけて55万枚近く、累計80万枚とされるが、数え方は確かめられなかった。歌の二人の関係(恋人か、そうでないか)や、どちらが東京を去るのかの読みも、人によって違う。
くらさんの考察
この曲が二つの代表曲になれたのは、男女どちらの立場にも寄りすぎない詞だからだと考えられる。見送る側の気持ちは書かれているが、その人の性別をはっきり示す言葉は少ない。男性のかぐや姫が歌っても、女性のイルカが歌っても成り立つ。伊勢自身はぴあの連載で、この曲はもう二度と作れない、20代の初めだからこそ作れたと述べている。若い時期にしか書けない寂しさが、どの年代の聴き手にも「自分の若い頃」として届くのだろう。
ジージへの問いかけ
・ジージが先に聴いたのはかぐや姫版でしょうか、イルカ版でしょうか。
・「なごり雪」という言葉が当時はなかったと聞いて、意外に思いますか。
・駅で人を見送る歌が多いのは、当時の上京や帰郷の暮らしと関係があると思いますか。
出典
・ウィキペディア「なごり雪」 https://ja.wikipedia.org/wiki/なごり雪
・ぴあ「伊勢正三 メロディーは海風に乗って」第12回(2024年3月8日) https://lp.p.pia.jp/article/lifestory/337495/338838/index.html
動画
・かぐや姫 (Kaguyahime) – なごり雪 (Official Audio)(PANAM)https://www.youtube.com/watch?v=3-y-VregNqg
・イルカ / なごり雪 (with 南 こうせつ・伊勢正三) 「イルカ with Friends Vol.10 (2014)」(イルカ)https://www.youtube.com/watch?v=bxLrpwSgMsE
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